別紙
当社は、確定拠出年金法に規定する個人型年金の運営管理機関ですが、今般、同法の改正により、企業型年金の加入者は、令和4年10月より企業型年金規約の定めによらず、原則として個人型年金に加入できるようになりました。これに伴い、企業型年金に加入している者が、当社の取り扱う個人型年金の加入者となるケースが増加してきており、今後、このような加入者がその個人型年金規約に基づく老齢給付金としての一時金(以下「本件個人型DC一時金」といいます。)の支払を受ける場合において、その支払を受ける前年以前に、勤務先を退職してその企業内退職金の支払を受けるとともに、企業型年金規約に基づく老齢給付金としての一時金(以下「企業型DC一時金」といいます。)の支払を受けている場合が生ずることが見込まれています。
ところで、確定拠出年金法に規定する個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金(以下「個人型DC一時金」といいます。)については、所得税法上、退職手当等(所得税法第30条第1項《退職所得》に規定する退職手当等をいいます。以下同じです。)とみなされ、退職所得に該当しますが(所法31三、所令72七)、その年に支払を受けた退職手当等が個人型DC一時金であって、その個人型DC一時金に係る勤続期間等(勤続期間又は組合員等であった期間をいいます。以下同じです。)とその年の前年以前19年内に支払を受けた退職手当等(以下「前の退職手当等」といいます。)に係る勤続期間等(以下「前の勤続期間等」といいます。)との間に重複している期間がある場合、その年の退職所得の金額の計算上控除する退職所得控除額は、その個人型DC一時金に係る勤続期間等による勤続年数に基づき計算した退職所得控除額に相当する金額から、その重複している期間を勤続年数とみなして計算した退職所得控除額に相当する金額を控除するとされています(所法30一、所令70二)。
また、前の退職手当等の収入金額が前の退職手当等について一定の方法で計算した退職所得控除額に満たない場合は、前の退職手当等の金額に基づき一定の方法により算定した期間を前の勤続期間等とみなして退職所得控除額を計算するとされています(所令70)。
そこで、本件個人型DC一時金の受給者が、本件個人型DC一時金の支払を受ける年の前年以前19年内の同一年に、企業内退職金や企業型DC一時金など前の退職手当等につき複数の支払を受けている場合において、前の勤続期間等の特例に係る規定(所令70)の適用に当たっては、下記2(2)及び(3)のとおり取り扱って差し支えないか照会します。
なお、本件個人型DC一時金に係る個人型年金においては、確定拠出年金法の規定による資産の移換がないことを前提とします。
(1) 法令について
イ 退職所得控除額の計算(原則)
退職所得控除額は、原則として、勤続年数に応じて、表1の算式により計算するとされています(所法30)。
(表1)
勤続年数 | 算式 |
---|---|
20年以下の場合 | 40万円 × 勤続年数 |
20年を超える場合 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
(注) 「勤続年数」は、所得税法施行令第69条第1項第1号に規定する退職手当等については勤続期間により、退職一時金等については組合員等であった期間により計算するとされています(所法30一、所令69一、二)。
なお、その年に2以上の退職手当等の支給を受ける場合には、これらの退職手当等のそれぞれについて計算した上記の期間のうち最も長い期間により勤続年数を計算するとされています。ただし、その最も長い期間以外の期間の年数の計算の基礎となった勤続期間等の全部又は一部がその最も長い期間の計算の基礎となった勤続期間等と重複していない場合には、その重複していない勤続期間等について計算した期間をその最も長い期間に加算して、勤続年数を計算するとされています(所法30一、所令69三)。
ロ 退職所得控除額の計算の特例
その年に支払を受けた退職手当等が個人型DC一時金であって、その個人型DC一時金に係る勤続期間等の一部が、その年の前年以前19年内に支払を受けた退職手当等(前の退職手当等)に係る勤続期間等(前の勤続期間等)と重複している場合には、次の(イ)に掲げる金額から次の(ロ)に掲げる金額を控除した金額がその年の退職所得控除額とされています(所法30一、所令70二)。
(イ) その年に支給される退職手当等の勤続年数に基づき上記イの算式により算出した金額
(ロ) 上記の重複している部分の期間を勤続年数とみなして上記イの算式により算出した金額
ハ 前の勤続期間等の特例
上記ロの場合において、前の退職手当等の収入金額が、前の退職手当等について上記ロの退職所得控除額の計算の特例に係る規定(所令70二)を適用しないで計算した退職所得控除額(以下「一定の退職所得控除額」といいます。)に満たないときは、前の退職手当等の支払金額の計算の基礎となった勤続期間等のうち、前の退職手当等に係る就職の日又は組合員等であった期間の初日(以下「前の退職手当等に係る就職の日等」といいます。)から前の退職手当等の収入金額に応じて表2の算式により計算した数に相当する年数を経過した日の前日までの期間を前の勤続期間等とみなして、上記ロの金額を計算するとされています(所令70)。
(表2)
前の退職手当等の収入金額 | 算式 |
---|---|
800万円以下の場合 | 前の退職手当等の収入金額 ÷ 40万円 |
800万円を超える場合 | (前の退職手当等の収入金額 − 800万円) ÷ 70万円 + 20 |
(2) 前の退職手当等の収入金額が「一定の退職所得控除額に満たないとき」の判定
本件個人型DC一時金の受給者は、その支払を受ける年の前年以前19年内の同一年において、前の退職手当等につき複数の支払を受けているところ、次のイ及びロのことを踏まえると、上記(1)ハにおける、前の退職手当等の収入金額が「一定の退職所得控除額に満たないとき」の判定に当たっては、前の退職手当等の収入金額はその合計額によるのが相当であると考えます。
イ 上記(1)ハのとおり、前の退職手当等に係る退職所得控除額は、上記(1)ロの退職所得控除額の計算の特例に係る規定(所令70二)を適用せず、その年に2以上の退職手当等の支払を受ける場合の勤続年数の調整に係る規定(所令69三)を適用して計算する必要があると考えられるところ、その同一年に2以上の退職手当等の支払を受ける場合の退職手当等の収入金額はそれぞれの前の退職手当等の収入金額の合計額となること。
ロ 上記(1)ハの前の勤続期間等の特例は、前の退職手当等に係る退職所得控除額に控除不足額がある場合に一定の調整を行う趣旨であると考えられるところ、退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額とされるのであるから(所法30)、退職所得控除額に控除不足額があるか否かも、その年中の退職手当等の収入金額の合計額と比較して判定するのが相当であると考えられること。
(3) 前の退職手当等に係る就職の日等
本件個人型DC一時金の受給者に係る前の退職手当等の収入金額が一定の退職所得控除額に満たない場合における上記(1)ハの「前の退職手当等に係る就職の日等」は、次のイ及びロのことを踏まえると、それぞれの前の退職手当等に係る就職の日等のうち、最も早い日と解するのが相当であると考えます。
イ その年に2以上の退職手当等の支払を受ける場合、これらの退職手当等のそれぞれについて計算した勤続期間等のうち最も長い期間により勤続年数を計算するとされていること(所令69三本文)。
ロ 上記イの最も長い期間以外の期間の年数の計算の基礎となった勤続期間等の全部又は一部がその最も長い期間の計算の基礎となった勤続期間等と重複していない場合には、その重複していない勤続期間等について計算した期間をその最も長い期間に加算して、勤続年数を計算するとされていること(所令69三ただし書)。